Yasuko Takezawa・Jean-Frédéric Schaub
2022
法・制度・政治・学問が、人種を創り人々を序列化していく淵源はどこにあるのか? 19世紀の西洋の衝撃と邂逅から同時代的に東アジアとヨーロッパで起きた人種化の波。明治期の人種認識、20世紀初頭のコスモポリタニズムと霊的普遍主義、最新のゲノム研究……近代以降の人種主義と反人種主義のせめぎあいを、日仏の論者たちが説き明かす。
序論──非英語圏からの共同発信の試み
[竹沢泰子,ジャン=フレデリック・ショブ]
I 前近代と近代の連続性/不連続性
第1章 「人種」と「文明」
──明治期の教科書記述にみる世界認識の変容 [竹沢泰子]
第2章 バスク人とユダヤ人の間で
──いかにスペイン人アイデンティティが人種化したか
[ジャン=フレデリック・ショブ]
【Dialogue】竹沢泰子×ジャン=フレデリック・ショブ
(コメンテーター)クロード=オリヴィエ・ドロン,平野千果子
II 統治と学知
第3章 被差別部落へのまなざしと生権力
──包摂と排除のポリティクス [関口 寛]
第4章 日本統治下台湾における植民地人類学
──「理蕃」政策と先住民族の本質化 [アルノ・ナンタ]
【Dialogue】関口寛×アルノ・ナンタ
(コメンテーター)坂野徹,ジャン=フレデリック・ショブ
III 分類する法
第5章 20世紀フランスとイタリアにおける法的経験
──反ユダヤ人法制,混血児の地位,優生政策
[シルヴィア・ファルコニエーリ]
第6章 近代日本の法的婚姻と人種論
──「国際結婚」をめぐる言説空間の変容 [長志珠絵]
【Dialogue】長志珠絵×シルヴィア・ファルコニエーリ(代理:ジャン=フレデリック・ショブ)
(コメンテーター)松本悠子,ライナー・マリア・キーソー
IV 反人種主義の葛藤と展開
第7章 両義的な反人種主義
──唯心主義的批判あるいは霊的人種間の不平等
[クロード=オリヴィエ・ドロン]
第8章 反人種主義と霊性──国際主義の歴史再考
[田辺明生]
【Dialogue】クロード=オリヴィエ・ドロン×田辺明生
(コメンテーター)池亀彩,ピエール・ブーレッツ
V 遺伝的祖先と人種の解体/再生
解説 遺伝子検査による祖先(ルーツ)検査とは [竹沢泰子]
第9章 ゲノム情報から「私」の祖先を“選ぶ”
[太田博樹]
第10章 DNA祖先検査は反人種主義に効果的な技術か
[サラ・エイベル]
【Dialogue】太田博樹×サラ・エイベル
(コメンテーター)ティモシー・コールフィールド,竹沢泰子
あとがき
索引索引(事項・人名)
執筆者紹介
掲載順、★は編者
京都大学人文科学研究所教授.ワシントン大学大学院博士課程修了,博士(文化人類学). 専門は,人類学,アメリカ研究.主な著作に,『アメリカの人種主義──カテゴリー/アイデンティティの形成と変容』(名古屋大学出版会,2022 年刊行予定),『新装版 日系アメリカ人のエスニシティ──強制収容と補償運動による変遷』(東京大学出版会,2017年),『人種神話を解体する』(シリーズ責任者・共編,全3冊,東京大学出版会,2016年)などがある.
フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)教授.EHESS 博士号取得.専門は,ヨーロッパ近世史,ユダヤ人史.主な著作に,Race et histoire dans les sociétés occidentales (XVe-XVIIIe siècle), Paris: Albin Michel, 2021. Race is about Politics. Lessons from History, Princeton: Princeton University Press, 2019. L’Europe a-t-elle une histoire ? Paris: Albin Michel, 2008. などがある.
四国大学経営情報学部准教授.一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了,博士(社 会学).専門は,歴史社会学.主な著作に,「人口に対する統治と「包摂/排除」をめぐる政治──日本近代の社会問題とマイノリティー」(『歴史学研究』1015,2021年),「アメリカに渡った被差別部落民──太平洋を巡る「人種化」と「つながり」の歴史経験」(田辺明生,竹沢泰子,成田龍一編『環太平洋地域の移動と人種──統治から管理へ、遭遇から連帯へ』京都大学学術出版会,2020年)などがある.
フランス国立科学研究センター教授.パリ大学博士号(歴史)取得.専門は,日本の人文科学史,台湾と朝鮮における日本植民地主義,戦争の記憶.主な著作に,「帝国日本と台湾・朝鮮における植民地歴史学」(坂野徹・塚原東吾編『帝国日本の科学思想史』勁草書房,2018年)「人種主義と科学者の「中立性」──アンリ・ヴァロワの活動を中心に」(坂野徹・竹沢泰子編『人種神話を解体する 第2巻 科学と社会の知』東京大学出版会,2016年)などがある.
フランス国立科学研究センター一般研究員/准教授.フェデリコ2世ナポリ大学,フランクフルト・アム・マイン大学共同博士号取得,法制史博士.専門は,法制史.主な著作に,La legge della razza: Strategie e luoghi del discorso giuridico fascista, Bologna: Il Moulino, 2011. “Penser la race en jurist,” Droit et Société, 109, 2021. などがある.
神戸大学大学院国際文化学研究科教授.立命館大学大学院文学研究科博士後期課程単位 取得退学,博士(文学).専門は,日本近現代史.主な著作に,『占領期・占領空間と戦争の記憶』(有志舎,2013年),『近代日本と国語ナショナリズム』(吉川弘文館,1998年) などがある.
パリ大学准教授.パリ・ディドロ大学 Ph. D. 専門は,科学史,科学哲学.主な著作に, L’homme altéré. Races et dégénérescence (XVIIe-XIXe siècles), Cezeyrieu: Champ Vallon, 2016. “Race and Genealogy. Buffon and the Formation of the Concept of « Race »,” Humana mente, 22, Pisa: Edizioni ETS, 2012. pp.75-109. などがある.
東京大学大学院総合文化研究科教授.東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退,博士(学術).専門は,人類学,南アジア地域研究.主な著作に,田辺明生・竹沢泰子・成田龍 一編『環太平洋地域の移動と人種──統治から管理へ,遭遇から連帯へ』(京都大学学術出版会,2020年),『カーストと平等性──インド社会の歴史人類学』(東京大学出版会,2010年)などがある.
東京大学大学院理学系研究科教授.東京大学大学院理学系研究科博士課程修了,博士(理学).専門は,人類集団遺伝学,分子人類進化学,ゲノム人類学.主な著作に,『遺伝人類学入門――チンギス ・ ハンの DNAは何を語るか』(ちくま新書,2018年),太田博樹・ 長谷川眞理子編『ヒトは病気とともに進化した』(シリーズ認知と文化)(勁草書房,2013年)などがある.
ケンブリッジ大学ラテンアメリカ研究センター英国学士院ポストドクトラル・フェロー. フランス国立社会科学高等研究院 (EHESS)博士号取得.専門は,文化人類学.主な著作に,Permanent Markers: Race, Ancestry, and the Body after the Genome, Chapel Hill: University of North Carolina Press, 2022. “Linked Descendants: Genetic-Genealogical Practices and the Refusal of Ignorance around Slavery,” Science, Technology, & Human Values, June. 8. 2021. などがある.
平野千果子(ひらの ちかこ) 武蔵大学人文学部教授.専門は,フランス植民地史.
坂野徹(さかの とおる) 日本大学経済学部教授.専門は,科学史.
松本悠子(まつもと ゆうこ) 中央大学文学部教授.専門は,アメリカ史,ジェンダー史.
ライナー・マリア・キーソー(Rainer Maria Kiesow) フランス国立社会科学高等研究院教授.専門は,法学.
池亀彩(いけがめ あや) 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授.専門は,南アジア地域研究, 社会人類学.
ピエール・ブーレッツ(Pierre Bouretz) フランス国立社会科学高等研究院教授.専門は,ユダヤ・アラブ世界の中世哲学.
ティモシー・コールフィールド(Timothy Caulfield) アルバータ大学法学部・公衆衛生学部教授.専門は,医学研究と法的問題.
上智大学名誉教授.専門は,フランス文学,通訳養成教育.主な通訳採録に,「オリヴィエ・アサイヤス+青山真治 時間の働きを受け入れること」(『Nobody : current montage issue 43(autumn 2015)』),「『帝国以降』の危機にいかに対処すべきか」(エマニュエル・ トッド著,石崎晴己篇『自由貿易は、民主主義を滅ぼす』藤原書店,2010年)などがある.
京都精華大学国際文化学部専任講師.フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)博士号(歴史学)取得.専門は,西アフリカ現代史,広域フランス語圏地域文化研究.主な 著作に,“Fighting for National Liberation in Africa: Pan-African Itineraries and National Settlements,” in Anais Angelo (ed.), The Politics of Biography in Africa: Borders, Margines and Alternative Histories of Power, London: Routledge, 2021. chap. 3, pp. 54‒72. “Panafricanisme ou nationalisme? Présence Africaine: une tribune des politiques culturelles au temps de la décolonisation,” Présence Africaine, 198: 199‒216. 2018. などがある.
早稲田大学教育学部非常勤講師.慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退 学.専門は,社会学.主な翻訳に,アンソニー・ギデンズ『社会の構成』(勁草書房,2015年),アルジュン・アパデュライ『さまよえる近代──グローバル化の文化研究』(平凡社,2004年)などがある.